小児皮膚科
小児皮膚科
生後2~3週ごろから赤ちゃんの顔や体に見られる湿疹の俗称です。乳児湿疹には、乾燥による湿疹、汗疹(あせも)、アトピー性皮膚炎による湿疹、かぶれなども含まれており、その原因をしっかり判断していくことが治療に繋がります。
乾燥による湿疹では、保湿スキンケアを行いながら、炎症が強い場合にはステロイド軟膏の併用を行います。また、乳児期は新陳代謝が多いため、汗疹(あせも)ができやすく、特に夏場では軟膏やクリームによるべたつきを軽減するために、ローション剤を選択するなど工夫しながら治療を行っていきます。
(保湿剤の塗り方:https://www.maruho.co.jp/hoshitsu/)
報告により差はありますが、10%前後のお子様にアトピー性皮膚炎の症状がみられており、小児皮膚科では非常に多い疾患です。一般に乳幼児・小児期に発症し、加齢ととのにその患者数は減少して、成人型アトピー性皮膚炎に移行するのはその一部といわれています。
乳児期には顔や頭など露出している部分に乾燥や赤み、炎症が強いとジュクジュクした湿疹がでてくることがあり、幼児期から学童期になると、むしろ顔の皮疹は少なくなり、首や肘、膝裏など左右対称性に四肢の関節部分に湿疹を繰り返すようになります。思春期や成人期になると、顔、首、胸や背中など体全体にかゆみや赤みがでて、特にかゆみの強く盛り上がった皮疹がでてくることもあります。
全年齢に共通して皮膚の乾燥があり、慢性(乳児では2か月以上、その他では6か月以上)に湿疹を繰り返すことが特徴です。
小さなお子様のご両親から尋ねられることが多い質問です。一時的な乳児湿疹と乳児期に発症したアトピー性皮膚炎では、いずれも湿疹病変ですので、初診ではなかなか判断がつかない場合があります。乳児期はどのお子様も皮膚が薄く、外的刺激に弱いため保湿スキンケアが欠かせません。したがって、一般的にはアトピーか乳児湿疹か、によって治療方針が大きく変わるわけではなく、保湿スキンケア+湿疹に対しての炎症を抑える治療(ステロイド軟膏など)で対処することはどちらも同じなのです。
たしかに、アトピー性皮膚炎では継続して治療が必要になることも多く、ご両親としては大変心配なことと思います。しかし、過度に恐れる必要はなく、個々の持って生まれた肌質を受け入れ、よい付き合い方を考えていくことが重要と考えています。
保湿スキンケアは皮膚の状態をみながら、お子様、ご両親ともに無理なくスキンケアが続けられるよう、季節や気温、湿度もあわせて適切な形状の保湿剤をご提案させていただきます。また、炎症を抑える治療に関しては、ステロイド軟膏を中心に、プロトピック(タクロリムス)軟膏や新薬のコレクチム(デルゴシチニブ)軟膏、モイゼルト(ジファミラスト)軟膏も小児用がございますので、症状をみながら適切な外用薬を処方させていただきます。
アトピー性皮膚炎のお子様では、アレルギー素因をもつことが多く、採血検査を行うと約60%は、5大食物アレルゲン(卵・牛乳・大豆・小麦・米)のどれかに陽性を示すといわれていますが、実際に食べてみて皮膚が悪化するのは10%以下と言われています。食物アレルギー検査が陽性だからといって、それがアトピー性皮膚炎の原因であることを意味しているわけではなく、もちろんすぐに除去する必要はありません。小児期の成長に必要な栄養素はきちんと摂取し、しっかりとした体づくりが大切です。
しかし、その食べ物を食べると必ず皮膚症状が悪くなる方、‘食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎’が疑われる場合には、専門家と相談して除去するか否かを判断する必要があります。診察時に詳しくお話しを伺い、症状を見させていただきながら、専門機関へのご紹介をさせていただきます。
とびひは、あせもや虫刺されを掻きこわした傷、すり傷、ジクジクした湿疹などに細菌が感染して起きます。これらの細菌は、健康な皮膚には感染しませんが傷ができていたりアトピー性皮膚炎があったりすると、皮膚の抵抗力が弱くなっているため感染してしまいます。
抗生物質の飲み薬と塗り薬(抗生物質やステロイド剤)を使います。
病変部をしっかりとシャワーで洗い流し菌をできるだけ減らしてあげることが重要です。
また、細菌培養検査にて原因となる細菌を同定も行います。
とびひの原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌はプール内の塩素で増殖することができないといわれています。したがって、水を介した感染拡大はきたさないと考えられますが、黄色ブドウ球菌はとても感染力が強く、かきむしったところの滲出液、水疱内容を触れることで感染したり、タオル、プラスチック製品、ビート板、木材などを介しても感染が拡大する恐れがあります。そのため治るまでプールや水泳は禁止しています(日本皮膚科学会での統一見解です)。
いぼはウイルス感染によるもので、両若男女問わずみられる疾患です。お子様の場合には、「ミルメシア」という、痛みを伴い、一見魚の目のように見えるイボが手足にできることがあります。治療は、液体窒素による凍結療法が基本です。通常1回で治ることはなく、1-2週間毎に根気強く繰り返し治療する必要があります。
ポックスウイルスの一種である伝染性軟属腫ウイルスの感染によって発症します。水イボに罹患したお子様との直接的な接触だけでなく、バスタオルやスポンジ、プールのビート板などを介して感染し、直径数mmまでの表面がツルツルした光沢のある盛り上がりとなって皮膚に現れます。自然に治癒することもありますが、それには数か月から多くは1年以上を要する場合も多く、その間に掻き壊して周りに拡大していくケースも少なくありません。数が少ない場合や、他に兄弟がいて感染させてしまうかもしれない、など、状況に応じて積極的に治療することもあります。
水いぼは皮膚と皮膚の直接の接触で感染するのですが、通常のプールでの活動で皮膚が直接病変部に接触して感染が起こる可能性は低いと考えられています。もちろん、プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません(日本皮膚科学会での統一見解です)。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共用することは避けて下さい。プールの後はシャワーで肌をきれいに洗いましょう。
尿や便による浸軟(皮膚がふやけること)+尿や便自体が刺激となり、おむつの当たるところに赤いブツブツやただれが出来ます。おむつをこまめに替えて、優しく拭き取る、または押し拭きすることをお勧めします。また、清潔を保つのは重要ですが、洗いすぎには注意が必要です。石鹸をつけて洗うのは1日1回とし、すすぎ残しのないように十分に流しましょう。
保護剤(ワセリンや亜鉛華軟膏、アズノール軟膏など)による撥水対策を行います。
かぶれてしまい、炎症が強い時には、弱いステロイド軟膏を使用します。数日ケアをしてもよくならない時は、保護剤の変更、ケア方法や撥水対策について見直しさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
水痘帯状疱疹ウイルスの初感染により生じます。潜伏期間は2~3週間と長く、発熱とほぼ同時に赤い発疹が出現し、やがて水疱になります。空気感染でうつるため、水疱がすべてかさぶたになるまで学校は出席停止です。
抗ウイルス薬を5日間投与します(成人の場合には5~7日間)。
皮疹に対しては、必要に応じて軟膏を処方いたします。
ヒトパルボウイルスB19による感染症で、数年周期で流行がみられます。お子様に多くみられ、成人の40~60%は抗体をもっているといわれています。潜伏期は1~3週間と比較的長く、はじめは軽い風邪の症状がでるか、あまり気づかない程度のこともあり、唾液や痰、鼻汁の中にウイルスがいて人から人へ広がります。その1週間後から顔が赤くなり、体に網目のような皮疹が現れます。皮疹がでたときにはすでに感染力は弱まっていることから、発熱や関節痛などがなく、本人が元気であれば学校を休む必要はありません。また、よくなっても日光にあたったり、入浴したりして体温が上がることがあると赤みがでてくることがありますが、これは再発ではありませんので経過をみていただいて問題ありません。
このウイルスに対する特効薬はなく、対症療法となります。
妊娠中に初めてパルボウイルスB19に感染した場合、ウイルスが胎盤を通過して約20~30%の割合で胎児に感染をおこし、さらにその約20~30%に胎児のむくみや胎児の貧血を起こす可能性があります。特に妊娠初期の感染は問題になることがあり、後期(28週以降)では影響は少ないと考えられています。りんご病を発症したお子様をもつお母様で、妊娠中の方は注意が必要です。妊婦さんにとって、ご自身が感染しているか、気になるところだとは思いますが、現在のところIgMのみ、‘15歳以上で皮疹があり、かつ、りんご病が疑われる方’に対して保険適応で測定することが可能です。IgGは自費となりますが、測定することは可能ですのでご相談ください。
※ウイルスに対する抗体には、IgMとIgGがあり、IgMは初感染の早期に作られる抗体で時間がたつと消失し、IgGはIgMが作られたあとに作られる抗体で、感染後にも長い間持続します。現在感染しているかどうかを知るには、IgMの測定が有用です。 抗体の判定の仕方は以下の表に示します。
IgG(陰性) | IgG(陽性) | |
---|---|---|
IgM(陰性) | 感染していない もしくは、感染早期でまだ反応していない |
過去に感染したことがある (現在ではない) |
IgM(陽性) | 感染早期 (現在感染しており、感染性あり) |
感染後期 (現在感染しているが、回復期にあるなど) |
コクサッキーウイルス(CA16)やエンテロウイルス(EV71)などのウイルスによる感染症で、手の平や足の裏、口腔粘膜に赤い皮疹や水疱ができます。風邪のような症状や発熱を伴うこともあります。原因となるウイルスがいくつか知られており、それぞれ症状にも多少のバリエーションがあります。水疱が手足だけでなく、臀部にも出たり、手に炎症が強くでて爪が浮いてはがれてしまう、といった症状もみられます。
発熱、体がだるい、口内炎で食事がとれない、下痢、頭痛などの症状がなければ学校を休む必要はありません。ただし、手足の水疱や口内炎が治っても、便の中に原因ウイルスが長い間にわたって排泄されるため、トイレの後はしっかり手洗いをしましょう。
これらのウイルスに対する特効薬はなく、対症療法となります。